研究概要 |
本研究では、1年目にラクナ梗塞モデルを完成させ、2年目の今年はその疾患モデルを応用する事を目的とし、以下の4つの目標を立てた。その目的と到達度を以下に記す。 1.GFP遺伝子導入ブタからの脳神経前駆細胞の回収ならびに分化・増殖のコントロール 2.ミニブタからの骨髄採取及び培養・増殖 3.ミニブタ脳梗塞モデルを用いた移植医療研究 4.ミニブタ脳梗塞モデルの脳ならびに行動の解析 まず初めに、本学解剖学講座の平尾助教に御協力頂き、まず静岡県畜産技術研究所の河原崎氏らが作製したGFP遺伝子導入ブタを御提供頂き、神経組織におけるGFP発現に関して調べた結果、嗅上皮においては嗅細胞や支持細胞、ボーマン腺ならびに嗅神経に発現が認められた。また、ブロモデオキシウリジン(BrdU)や各種抗体を用いて免疫染色を行った結果、未分化な前駆細胞から成熟した嗅細胞においてGFPを発現しているのが確認された。 また、共同研究者の齋藤らは、脳細胞が分裂能を残していると思われる生後2週齢のブタにBrdUを腹腔内投与した結果、脳室周囲(SVZ, Subventricular Zone)ならびに海馬の歯状回神経細胞層より更に内側にある小型の細胞においてBrdUが確認された事から、これらの細胞が再生治療のために有用である事が示唆された。なお、後者の小型細胞に関して、更に精査している。 以上の結果から、本GFP遺伝子導入ブタが脳梗塞モデルを用いた再生医療研究に有用である事が確認された。 4つの目標のうち1つ目はクリア出来たものの、回収したSVZ周囲の細胞および骨髄細胞の培養および分化・増殖のコントロールが困難を極めた。詳細な原因は現在でも不明であるが、ブタはマウスやラットと異なり頭蓋骨が厚い。従ってSVZ周囲の細胞を回収するまでに時間を要するため、回収段階で細胞の活性が失われている可能性がある。それ以外にも、培養条件なども検討中である。 本研究では2年という短期間に多くの目標を掲げたが少々消化不良の感は否めない。しかしながら、有用なミニブタ疾患モデルが完成し、GFP遺伝子導入ブタの入手と共に、移植細胞の候補選定も目処を付ける事が出来た事から、本研究で今後の研究基盤が整える事が出来た。
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