研究概要 |
【研究の目的1マスト細胞が即時型アレルギー応答だけではなく、自然免疫応答や獲得免疫応答に広く関与していること(Galli SJ, et. al.Nat Immunol 6:135,2005)に着目し、とくにウイルス感染におけるマスト細胞の役割に今年度は注目して解析を行った。【結果】マスト細胞欠損W/即と正常マウスにウイルス(マウス肝炎ウイルス、mousehepatitis virus,MHV:強毒株)を感染させ、感染後の生死、抗体価、各臓器におけるウイルスタイターをPCR法により評価した結果、致死率や各臓器におけるウイルスタイターは、マスト細胞欠損マウスで高かった。腹腔のマスト細胞を修復したものでもこの症状は改善されず、マスト細胞欠損マウスのその他の欠損や全身性のマスト細胞の関与が示唆された。また、その他のRNAウイルスである水庖性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus,VSV)や脳心筋炎ウイルス(Encephalomyocarditis、EMCV)の感染では、感染後の血中サイトカインの産生はマスト細胞欠損マウス(Wsh/Wsh)で低下しているものの、生存率には影響しなかった。In vitroで骨髄から培養したマスト細胞をこれらのウイルスで刺激すると、ウイルスの用量に依存して1型IFNやケモカインの産生が観察された。To 11様受容体3やそのアダプター分子MyD88を欠損するマスト細胞でも正常マウスと同レベルのサイトカイン産生がみられたことから、これらのウイルスによるマスト細胞の活性化にはToll様受容体以外の細胞質内RNA認識分子の関与が示唆された。今後、これらの受容体を介したマスト細胞の活性化とin vivoにおいて、マスト細胞欠損マウスでみられたサイトカインの産生の低下との関連について、マスト細胞によって活性化されうる他の細胞の関与も含めて検討していく予定である。
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