トリニトロフェノール(TNP)特異的IgEで受動感作したマウスの耳介にTNP標識OVAを皮内投与すると、即時相・遅発相に続いて慢性相(IgE-CAI)の皮膚主張が認められる。我々は、末梢血白血球のわずか0.5%を占めるに過ぎない好塩基球が、IgEと高親和性IgEレセプターFcεRI依存的に慢性相を誘導する機構が存在することを発見し、これまでにほとんど研究が進展していない好塩基球がアレルギーにおいて重要な役割を演じていることを示した。この好塩基球主導で引き起こされる慢性アレルギー炎症局所には、好酸球の著明な浸潤が認められる。本研究では、好塩基球と好酸球がアレルギー性炎症にどのように寄与しているかを解明するために、誘導型の好塩基球欠損マウスおよび好酸球欠損マウスを世界に先駆けて樹立することを目的とした。すなわち、好塩基球あるいは好酸球特異的に発現する遺伝子のプロモーターの下流にジフテリア毒素(DT)受容体cDNAを連結した組換え体を用いてトランスジェニックマウスを作製し、DTの投与によって好塩基球・好酸球を任意の時期に傷害するマウスモデルを樹立した。好塩基球傷害マウスでは、DT投与後3日で末梢血における好塩基球数が1/10に減少し、IgE-CAIによる皮膚腫脹反応が完全に抑制された。好酸球傷害マウスでは、DT投与後3日で末梢血中好酸球が1/3に減少し、IgE-CAIは有意に抑制された。このことはIgE-CAIにおいて、好塩基球がイニシエーター、好酸球がエフェクターとして機能していることを強く示唆している。平成20年度は、DTの投与量・投与時期等様々な条件で好塩基球あるいは好酸球を傷害し、三相性皮膚主張における好塩基球・好酸球の作用機序を明らかにする。好塩基球・好酸球のアレルギーの慢性化への関わりが解明されれば、今後の創薬・治療法開発への応用が期待できる。
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