研究概要 |
1)国立精神・神経センターでコロニーを確立したDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)の動物モデルである筋ジストロフィー犬(CXMD_J)では、生後2週齢頃からDMDやゴールデンレトリバー種の筋ジス犬(GRMD)と同様の心電図の異常Q波が出現し、7ケ月齢では全例に認められた。しかし、心臓超音波検査や病理学的検討では左室後壁の線維化は12ケ月齢以降に出現していた。異常Q波の成因として左室後壁の線維化による起電力の低下が指摘されてきたが、筋ジス犬の解析から異常Q波の出現が左室後壁の線維化に先行することが判明した。さらに、作業心筋に明らかな病変が見られない4ケ月齢のプルキンエ線維には著しい空胞様変性が見られ,透過型電子顕微鏡ではプルキンエ線維内の筋原線維の著明な断裂が確認された。プルキンエ線維では特異的に、1)ジストロフィンC端型アイソフォームDp71とジストロフィンのホモログであるユートロフィンが過剰発現し、月齢に伴いDp71の発現増強とユートロフィンの発現低下が起こっていること、2)Ca依存性プロテアーゼであるμカルパインが過剰発現し、基質である心筋型トロポニン-Iや-T,デスミンが分解されていることを見出し、プルキンエ線維の変性機構にユートロフィンの代償不全や筋タンパク質の分解が関与している可能性を指摘した。この筋ジス犬プルキンエ線維の変性が心電図異常や筋ジス犬で観察される心室性不整脈に関与している可能性がある。
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