研究概要 |
1.空間分解分光法を用いた筋組織酸素濃度イメージング装置の改良 イントラリピッドと血液を用いた従来の筋組織液体ファントムに代わり,取扱が簡便で長期使用が可能なプラスチックファントムを試作し,装置校正面からもイメージング装置の実用化に向けた検討を行った.プラスチックファントムを空間分解分光法と時間分解法の2法で計測・比較したところ,吸収係数値の差異は10%以内であり,実用的精度が得られることを確認した.また,プラスチックファントム,液体ファントム,生体組織において反射光強度分布をCCDカメラで撮影することにより,光拡散近似の妥当性,空間分解分光法による吸収係数のイメージングの妥当性等についても確認できた. 2.運動負荷時の筋組織酸素濃度の時間応答解析 試作装置を用いて一般成人と漕艇競技の運動選手を対象に,レッグプレス運動負荷による大腿部伸筋群(外側広筋,大腿直筋,内側広筋)の酸素濃度変化と運動後の回復を測定した. 測定の結果,運動選手の筋組織酸素濃度(酸素化ヘモグロビン濃度)及び全ヘモグロビン濃度は安静時,運動時,運動後の各時相において一般成人より約15%高く,運動選手における毛細血管床の発達やミオグロビン濃度の増加の可能性を示唆する結果であった.また,一般成人の筋組織酸素濃度の回復率には筋間の差が見られなかったが,運動選手では内側広筋の回復率が他より1.5倍高かった.さらに,同一の筋で比較した場合,運動選手の回復率は一般成人より約2倍高かった.これらの結果より,試作装置が運動時における複数の筋の同時比較や練習効果の定量的評価に有用であることを提示できた.
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