研究概要 |
本年度は, 昨年度までに開発した装置を用いて筋組織酸素濃度分布のイメージングを行い, 筋組織の酸素濃度に関する以下の検討を行った。 ○同一筋内でのイメージング例として, 異なる運動強度で等尺性膝伸展運動を行い, 大腿直筋の酸素飽和度(StO_2)の時空間変化を計測した5StO_2は運動開始後10秒程度で急速に低下し, その低下量が弐運動強度に良く相関することなど, StO_2のイメージングが筋組織酸素化動態の把握に極めて有用であることを確認した。 ○異なる筋での多点計測例として, 大腿部の膝伸筋群(大腿直筋, 外側広筋, 内側広筋)を対象として, 異なる等尺性膝伸展運動を行ったときの各筋のStO_2の時空間変化を計測し, わずかな運動様式の違いも明瞭に把握できることを確認した。 ○スポーツ医学における定量的評価手法の有用性確認のために, 一般成人と漕艇競技選手を対象に足踏み込み運動による膝伸筋群の筋組織酸素濃度分布を計測し, 運動選手の筋組織中の全ヘモグロビン・ミオグロビン濃度が一般成人より約20%高いこと, 大腿直筋, 外側広筋に比べ内側広筋の酸素回復速度が約1.5倍速いこと, 運動選手の回復速度は一般成人より約2倍速いことを明らかにした。 ○近赤外分光法の測定値と筋代謝の因果関係を推測するため, エネルギー生成系と酸素運搬系を考慮した筋代謝モデルの作成を行い, 運動時と運動終了後の酸素消費量などの経時変化を実測とシミュレーションで比較し, 時間変化を忠実に再現できることを確認した。 本研究により筋組織の局所的な酸素濃度の計測が可能となり, 酸素消費量から局所の代謝量の評価が実現できた. 従来不可能であった局所代謝計測が非侵襲で実現できる手法が開発されたことは, スポーツ医学やリハビリテーション医学の進展に大きく寄与するものと考えられる。
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