研究概要 |
本研究では,表面筋電位信号からユーザの意図する動作を実時間で推定しつつ,自然な感覚で多自由度電動義肢やロボット等を操作可能なインタフェースの構築を進めている.この目的のため,本年度は筋電位信号を基にユーザの意図する動作を識別する手法の開発を行った.開発した動作識別手法は以下の通りである.信号計測部ではユーザの前腕より筋電位(EMG信号)を計測し,この信号を基に積分筋電(IEMG信号)を計算する.次に,特徴抽出部ではEMG信号とIEMG信号から特徴ベクトルを抽出する.特徴ベクトルは,IEMG信号とEMG信号のケプストラム係数を基に構成する.学習及び動作識別にはサポートベクターマシン(SVM)を利用する.学習部では,学習データからSVMのハイパーパラメータを求め,識別関数を予め構成する.動作識別部では識別関数を基に特徴ベクトルから動作クラスを識別し,ユーザの意図する動作を決定する. 以上の動作識別手法を用いて,8名の健常者を対象とした手の6動作(手首屈曲,手首伸展,握る,開く,前腕回内,前腕回外)の識別実験を行った.その結果,すべての被験者において90%以上の動作識別率を示した.他の識別器(線形判別分析,k-最近傍法,ニューラルネット)との比較実験の結果,本手法の動作識別率は被験者平均で数%良く,また長時間にわたる動作識別実験においても識別率低下が他の識別器に比べ低く抑えられていた.以上の結果より,筋電位信号を基にユーザの意図する動作を識別する手法として有効であることを確認した.
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