日本では、毎年30万人以上ががんで死亡しているが、その約3%は医療診断における被ばくが原因であるという報告がある。単純に計算すると、日本だけで毎年1万人が医療ひばくが原因の発がんで死亡している計算となる。本研究の目的は被ばくを大幅に軽減できる医療診断機器を開発することである。 本年度は、昨年度出願した被ばく軽減を目的とした単色X線発生装置に関する2件の特許が公開になった(特許公開2009-170347X線発生装置、特許公開2009-054562X線発生装置)。本年度は、この2件の特許の内容を更に発展させるべく、内容の細かいパラメータの決定のためのシミュレーション作業を行った。 X線撮像の原理は、基本的には影絵と同じで各組織によるX線の吸収・散乱の違いを画像化する。X線を吸収・散乱する確率は、X線光子のエネルギーによっても異なり、最適のエネルギーが存がする。特にヨウ素を用いた造影検査では、ヨウ素のK吸収端より少し大きなエネルギーのX線が効率良く影を作るので、同じコントラストを得るための被ばく量を軽減できる。昨年度出願した2件の特許は、このようなエネルギーの単色のX線を発生させる装置に関するものである。出願の際は、基本的なアイデアを示しただけだが、本年度は装置の細かなパラメータの最適化を行い、単色X線の発生効率を当初の1.5倍程度に高めることができた。また、単色X線以外の連続X線は、半分程度に軽減することができた。
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