人工心肺のトラブル対処訓練および安全教育は重要である。コンピュータ制御のシミュレータで、臨床で経験することが多い、あるいは滅多に経験しないが重篤になりやすい種々のトラブルを発生させる訓練プログラムを工夫し、さらに訓練効果を客観的に評価することを考えた。プログラムとして、コンピュータ上のシミュレーション、実際ポンプをまわしておこなう訓練とすることを群画した。 研究実績としては(1)訓練プログラムおよびシナリオの検討:発生すると重篤になるインシデントを中心としたシナリオを作成し、臨床系学会のハンズオンセッションで用いた。(2)シミュレータのデザイン1)PC上のプログラム:今回は特に変更せずに使えた、2)トレーニング用システム:運搬が可能なシステム(ECCSIM-Lite)を作成し、人工臓器セミナーに持って行き臨床工学技士の意見を聞いた、3)臨床に近い機材で手動操作を行い、流量が出せるか、鉗子操作で著血槽レベルが保てるかを経時的に記録した。(3)コンピュータ制御される応用編シミュレータの開発を継続して行った、(4)無線操縦で行う、コンピュータを使わないシミュレータ(サイドワインダー)の開発:音が静かで、インシデントの発生するのが予測出来ない装置が完成し、米国人工臓器学会(2008年5月)で発表し、論文は雑誌"Perfusion"に掲載された。(5)シミュレーション用人工心肺システム:ハンズオンセッションでもちいる教育用回路として満足できるものと思っている。(6)人工臓器教育セミナーでの活用を行い他に、臨床系学会でのハンズオンセッションに持って活用することを希望している。 この1年間に人工心肺を用いた体外循環の安全教育は進歩したと感じたが、まだ人工心肺の安全装置設置基準の勧告が守られていない施設は多いのが現状である。心して活動していきたい。
|