本研究では、モニタリング技術(ダイアライザ前後の血液/透析液圧と透析液排液中溶質濃度の連続測定)とkinetic modelingにもとつく自動制御機構を透析装置に組み入れることにより、個々の患者に対する至適透析を在宅で施行可能とする、在宅ナビゲーション透析システムの開発を目的としている。本年度は主として以下の2項目について検討した。 1)ダイアライザ性能の経時変化:血液透析(HD)施行に伴い、ファウリング(タンパクの膜付着現象)に伴うダイアライザ性能の経時変化が生じる。今回ダイアライザ前後の血液/透析液圧、内部濾過流量、溶質(クレアチニン、β2-ミクログロブリン、α1-ミクログロブリン、アルブミン)のクリアランスCLの経時変化を牛血液系HD実験より検証した。その結果、血液側圧力の上昇、透析液圧の減少が確認された。また、市販されている高性能ダイアライザにおいて、α1-ミクログロブリン、アルブミンクリアランスの経時減少が確認され、他の小・中分子溶質のCLはほぼ一定の値が得られた。 2)ダイアライザ内圧-流量分布モデル:1)の実験結果をもとに、自作モデルを用いダイアライザ内圧-流量分布を計算した。その結果、ダイアライザ局所における膜間圧力差(血液側圧-透析液側圧-コロイド浸透圧)ならびに濾過係数より求めた内部濾過/逆濾過流量も経時的に減少していることが推定された。 今後、透析液排液中溶質濃度の連続測定に関する実験を行い、経時的な溶質除去特性の把握に着手する予定である。
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