研究課題
本研究では、モニタリング技術(ダイアライザ前後の血液/透析液圧と透析液排液中溶質濃度の連続測定)とkinetic modelingにもとづく自動制御機構を透析装置に組み入れることにより、個々の患者に対する至適透析を在宅で施行可能とする、在宅ナビゲーション透析システムの開発をめざしている。本年度は主として以下の項目について検討した。1)血液透析器性能の経時変化を説明する理論モデルの確立:血液透析器性能の経時変化についてはすでに十分な実験結果が蓄積されたので、ファウリングに伴う血液透析器性能の経時減少を予測できる膜透過モデルを理論的に構築し、その妥当性を検証した。具体的には、実験データに対しシミュレーション解析(数値計算)を行うことにより膜濾過係数などのパラメータを求め、経時的に減少することを突き止めた。また、超音波ドプラー法ならびに浄化器入口部膜間圧力差と濾過係数から推算する内部濾過流量の経時変化を求め、理論モデル計算の結果と照合し、概ね妥当な結果が得られた。2)透析液排液中析液中溶質濃度の連続測定:将来の汎用性を考え、実際の臨床で得られる透析液排液中の溶質濃度と高い相関を得る最適吸光波長を溶質ごとに求めることを想定し、本研究では牛血漿系実験ならびに臨床における透析液排液について検討し、溶質としては尿素(分子量60)を対象とした。具体的には、種々の吸光波長スペクトルにおける吸光度の経時変化を求め、検体検査(ウレアーゼ)法により求めた尿素窒素濃度の経時変化と照合して求めた。その結果、検体検査とは異なる波長スペクトル(300nm付近)成分の相関がもっとも高い結果が得られた。今後、ナビゲーション透析システム開発を意識した、アルゴリズムの開発等基盤技術の検討に着する予定である。
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腎と透析 別冊2009,ハイパフォーマンスメンブレン'09 67
ページ: 138-142