研究概要 |
本年度は,主に実験系の構築とデータ処理手法の開発を行った。まず,皮膚温バイオフィードバックシステムを導入し,その使用法に慣熟するとともに,被験者に影響を及ぼす環境因子や心理的負荷状況を調べ,適切な実験条件を求めた。その結果,個人差を吸収できるようなベースラインの設定方法およびモチベーションを維持できるフィードバック方法がとくに重要であることが判明した。また,脳機能計測については,主にfMRIについて,さまざまな条件で被験者の反応を調べ,とくに心理的集中を確実にするための方策を探った。これは,fMRI測定とバイオフィードバック訓練が両立するためには,MRI装置の騒音等の環境下でも,バイオフィードバックに対して被験者が集中できるような条件が必須であるからである。その結果,皮膚温度をパターン化して視覚刺激として提示する方式が一つの有力な方法であることを見いだした。すなわち,単なる数値情報提示だけではなく,バイオフィードバック訓練中における自己の状況をより直感的に把握できるような表示が必要であることが示された。さらに,バイオフィードバックのモデルについてもその精緻化をはかり,従来困難であった「気づき」現象を組み込めるめどがついた段階である。一方,データから雑音成分を除去してS/N比をあげるための統計的な手法についても検討を行った。これは,データ処理過程において誤差を最小化する推定方法を求めることに帰着するが,一定の多変量空間において適用できる手法を開発しつつある。以上の準備と予備実験結果のもとに,次年度は本格的データ収集を行う予定である。
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