本研究は、骨髄、滑膜、軟骨、脂肪組織由来間葉幹細胞の軟骨分化能の違いに関する実験を行うもので、高密度培養とコラーゲンゲル培養により軟骨分化能を比較する in vitro 実験 (平成19年度) と動物に移植して軟骨分化能等を比較する in vivo 実験 (平成20年度) から成っている。 平成19年度は、高密度培養で良い成績を示した骨髄、滑膜、軟骨組織由来の軟骨分化誘導過程を比較し学会発表し、論文投稿中である。続いてのコラーゲンゲル培養では、コラーゲンゲルに対し幹細胞の比率を高めたことで細胞接着を促進し滑膜由来、骨髄由来の幹細胞で優れた軟骨分化能を示した (学会発表し、論文投稿中) 。この方式で脂肪組織由来幹細胞の軟骨分化誘導も期待できると予測し、コラーゲンゲル培養を行っている。 平成20年度は、異なる組織由来の幹細胞を用いた in vivo 実験であるが、骨髄、滑膜に脂肪組織由来幹細胞を加える予定である。移植する幹細胞は、 DiI および Qdot ナノクリスタルで標識した。結果は以下に示す。 1. ウサギ滑膜由来幹細胞-コラーゲンゲル複合体を軟骨欠損部に移植する実験では、移植後1日で、幹細胞は、球状を呈しコラーゲンゲル中に分散して存在した。移植後4週で、 DiI で標識した幹細胞は、軟骨細胞様細胞に分化し、軟骨基質様マトリックス中に分散して存在した。 2. ラット骨髄由来幹細胞-コラーゲンゲル複合体をラットの骨膜下および筋肉中に移植する実験を行った。移植後2日で、 Qdot ナノクリスタルで標識した幹細胞は骨膜下および筋肉組織内で確認された。電顕像においても Qdot ナノクリスタルは、細胞質内の超微粒子として確認出来た。移植後1週、3週、5週の試料を採取し解析を急いでいる。 2年間ですべての実験を終了することが出来ず、脂肪組織由来幹細胞の in vitro および in vivo 実験と、骨髄由来幹細胞を動物に移植する実験データの解析が残されている。投稿中2通、投稿準備中1通があり、成果報告書の提出延期を予定している。
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