平成20年度においては、(1)種々分子量のポリ(L-乳酸)(PLLA)とポリ(D-乳酸)(PDLA)を合成し、これらから異なるブレンド比でブレンドを作製し、結晶化温度・時間で結晶化した際のステレオコンプレックス(SC)形成に関する検討を行うとともに、(2)置換型ポリ乳酸の光学異性体ブレンドにおけるSC形成に関する検討を行い、さらには、(3)反復溶媒キャスティンング法におけるSC形成に関する検討を継続して行った。(1)では、一方のポリ乳酸(PLA)の分子量がある臨界値以下であり、ブレンド比PLLA:PDLAが50:50付近であれば、容易にSCが形成されることが判明した。また、これらのブレンドのメルト状態からのSC形成の結晶化温度・時間依存性およびSC結晶化挙動に関する詳細な検討を行った。(2)では、フェニル基などのかさ高い置換基がPLAに導入されることにより結晶性が低下するため、SC形成にまでは至らないが、置換型PLAと未置換型PLAのブレンドであっても、R体とS体間の相互作用は、R体どうしあるいはS体どうしよりも強いことが判明した。このことは、新規光学異性体ブレンド材料の設計に有用な知見である。(3)では、溶媒キャスティングプロセスの反復回数の拡大を行い、SC形成について検討した。その結果、ベンゼンとクロロホルムを溶媒に用いた場合、3回行うと形成されるSC量は飽和したが、ジクロロメタンとジオキサンでは、上昇傾向を示した。
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