研究課題
キチンおよびセルロースに結合するドメインと細胞成長/分化因子との融合タンパクを作製し、それらをキチン/セルロースによってゾーン化したバイオマテリアルに結合させる。そこで幹細胞等を培養すると、未分化維持ゾーン(人工ニッチ;生体内で幹細胞が未分化なまま増殖する場所(ニッチ)があるといわれている。このゾーンはそのニッチを人工的に模倣したものといえる。)では未分化を維持したまま増殖し、分化誘導ゾーンでは細胞の分化が誘導される。このような相反する条件を、細胞成長因子や分化因子を後から加えるといったことなしに、同時に制御しようとするものである。この目的に沿って、研究を展開し、 chitin-binding domain(ChBD)またはcellulose-binding domain(CBD)とFGF2、 BMP2、 VEGFとの融合蛋白質を大腸菌、昆虫細胞(後2者)をもちいてそれぞれ発現させた。これら融合蛋白質はキチンなどに結合している方が細胞増殖活性などに優れていることがわかった。 ChBD-FGF2を結合させたキチンシート上では間葉系幹細胞は液層に分化因子であるBMP2を添加しても未分化なまま維持された。一方、そのシート上から増殖し、シート外へ出た細胞はBMP2の影響によって分化した。なお、シート上の細胞と同様に、シートの下の細胞もシートに結合したChBD-FGF2の影響によって、未分化なまま維持されていることがわかった。細胞の方向性を問わず有効であることがわかった。これらのことより、 FGF2を結合しているバイオマテリアル(人工ニッチ)上では幹細胞の未分化を維持しながら、その範囲外へ増殖した細胞は分化するという同時制御が可能となった。
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Journal of Bioscience and Bioengineering 107(6)(in press)
Proceedings(I)of the Joint Symposium on“Pioneering Development of Human Ad aptive Materials"and“Micro and Trace X-ray Analysis" 2009
ページ: 139-141