卵の内側の白色の薄皮を卵殻膜といい、昔は、創傷被覆材として日常的に使用されていた。再生医療で用いる足場は、植え込み直後ばかりではなく遠隔期にも多大な影響をおよぼし、その結果が患者の予後を左右するといっても過言ではないほど重要である。卵殻膜の材料としての利点を生かし、また従来からの欠点を解消することができれば再生医療および臨床医学にとって極めて有効な新しい素材になると考えられた。古典的材料である卵殻膜でも処理方法の工夫により、細胞接着性を改善し足場として用いることができれば、適応用途を新しい方向に導くことができると考えた。計画として(1)材料の選択及び評価、(2)処理方法の検討、(3)細胞親和性の検討、(4)動物実験(RECモデル、他)での評価、(5)細胞親和性などの評価、等を計画した。多用されている鶏の卵殻膜をRECモデルで短期間観察したところ、周囲における線維芽細胞の増殖を阻害しないことがわかった。また、周囲において血管新生が観察されたが、形成された結合組織は卵殻膜に接着が不良であった。また、RECモデルで蓋のガラスが破損しても、チャンバー内に形成された血管の構造は保たれており、中の組織を保護することが観察された。線維芽細胞の遊走を阻害しない、および癒着しない性質と保護作用から、創傷被覆材としての可能性は示唆されたが、材料の選択および処理方法にはまだ、解決しなくてはならない点が多数あることが明らかになった。
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