研究概要 |
卵殻膜の成分や性質に着目して研究が進められてきたが、最近では、高度・高機能の利用法が期待されている。卵殻膜の材料としての利点を生かし、従来からの欠点を解消することができれば再生医療および臨床医学にとって極めて有効な新しい素材になると考えてきた。処理方法の工夫により、細胞接着性を化学的処理の条件を変えることにより改善し、足場として用いることが可能となり、適応用途を新しい方向に導くことができると考えた。動物実験モデルはrabbit ear chamber(REC)を用いてきたが、ステージの固定に瞬間接着剤を使用していたのをネジ止めの改良を加えたところ、作成時間が短くなり、出血に対応出来るようになったため、数をこなすことが可能になった。このモデルは非侵襲的、経時的、直視下に観察可能な慢性に観察可能である。繊維状のコラーゲンを微量足場として留置することにより、新生血管の伸展が良好であり、卵殻膜の細胞親和性が限られていることを改善することができた。観察は生体顕微鏡で毎週1,2回行い、マクロ写真撮影および生体顕微鏡での観察所見をビデオに収めた。このモデルでは血管の伸展が良く、術後2週間から創傷治癒、血管伸展を観察することが可能で、形成された組織が薄いため術後2週間では血管内を転がる白血球の移動速度を測定することが可能となり、材料の違いによる炎症反応を観察することができるのではないかと考えている。観察内容として細胞の遊走・増殖、細胞接着、また血管に関しては材料との接着、伸展方向、密度、動脈化、サイズを観察した。卵殻膜では繊維状コラーゲンほどには細胞接着が良くなく植え込み材料としてではなく、創傷被覆材としての応用の方が優れている可能性が示唆された。
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