予備的検討として、健常ならびに虚血性脳血管患者15例の頸動脈30側において、頸動脈壁スペックルトラッキングのための至的撮像・解析条件を検討した。その結果、発信・受信中心周波数10MHzのファンダメンタル画像で、デプス1.85mm、フレームレート40fps前後での撮像が最適であることがわかった。また、解析は、長軸遠位壁で最も容易であり、また、頚動脈内膜中膜複合体厚が正常範囲(数mm程度)の厚みでも、その長軸および厚み方向ストレイン曲線を描出できることがわかった。 本法の妥当性の検討のために、別の虚血性脳血管障害患者17例の頸動脈34側の長軸像遠位壁5箇所において、厚み方向ストレインを計測した。2検者間の計測値はよく相関し、プラークや輝度上昇部位では、ストレインが有意に小さいことがわかった。このことから、動脈硬化性の局所の繊維化や石灰化による硬化を、この方法で定量的に評価できると考えられた。 一方、これと平行して、頸動脈内膜剥離術施行前頚動脈50側のエコーの視覚的評価と手術所見とを照合した。まず、潰瘍のエコー診断については、我々が新たに考案した診断基準を使えば、潰瘍を正確に診断できることを示した。次いで、内膜や壁内部の異常運動と潰瘍・亀裂、プラーク内出血との関係を検討し、これらが密接に関係することを示した。これらの成績は、頸動脈エコーによる動きの評価がプラークの破綻や易破綻性の予測への有用性を示唆する成績と考えられた。
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