昨年度の検討で定めた撮像条件と解析設定を用い、臨床例における頸動脈の2次元スペックルトラッキング(2DST)分析を行った。まず、虚血性脳血管患者の20例の頸動脈40側で、頸動脈長軸像と短軸像で描出される動脈壁局所の動態評価を試みた。その結果、トラッキング成功率は、長軸像遠位壁では高かったが、近位壁や短軸像の動脈壁では低かった。長軸像遠位壁では、計測されたストレイン(St)絶対値がプラーク部位で非プラーク部位より有意に低値であった。 そこで、虚血性脳血管患者90例の頸動脈180側において、長軸像遠位壁の壁厚および長軸方向のSt値および拡張末期からピークStまでの時間(TP)を計測した。89%の区域でトラッキングが成功し、壁厚方向のStと長軸方向のStおよびTPは、再現性よく計測できた。壁厚方向St絶対値は、プラーク区域で非プラーク区域より有意に小であった。総頸動脈遠位壁では、2DSTによる壁伸展性の評価が可能であり、プラーク部位の伸展性低下を捉えうると考えられた。 これと平行して、プラーク部位の動きの視覚的評価についても検討を進めた。新規の頸動脈内膜剥離術患者22例の頸動脈22側につき、手術時所見とエコー所見との対応を前視的に検討した。プラーク表面エコーの途絶は、プラーク破綻ないし潰瘍とよく対応した。また、表面の収縮期陥凹や内部の揺動などの不自然な動きは、手術時のプラーク内部の変性とよく対応した。頸動脈エコーによるプラークの動きの評価が、プラークの破綻や易破綻性の評価に有用である可能性を示す成績と考えられた。
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