研究概要 |
本年度は, X線CT画像における肺結節陰影の医師による診断過程の解析結果を元に, 計算機支援診断(CAD)システム性能の更なる向上, とくに研究の目的である信頼できるCADシステム構築に向けて, 検出率の向上と偽陽性率の更なる低減を行った. はじめに, 偽陽性症例を詳しく分析し, その主要原因の一つである従来のガボールフィルタ適用の際に生じる標本化誤差の影響を低減するアルゴリズムを開発し, より高精度な形状情報の抽出を行った. これにより, 真陽性率90%という高検出率条件下でも, 従来法より偽陽性率を約15%低減することに成功した. つぎに, さらなる検出率の向上を図るため, 従来のCADシステムが不得手とする, 孤立性の円形を呈しない胸壁付近の病変陰影などを検出する新しいアルゴリズムの開発を行った. このアルゴリズムは, 動的輪郭モデルを用いてX線CT画像中の胸壁輪郭を検出し, 輪郭内部の肺野領域を抽出することで, 非孤立性結節陰影を孤立性結節陰影に変換し, 従来のCADアルゴリズムでも非孤立性陰影を検出前能とするものである. 試験的な性能評価により, 従来検出できなかった胸壁に付着した肺がん陰影を検出可能であるという結果を確認した. また, 診断対象となるX線CT画像のさらなる収集を行ってデータベース化し, 所蔵データ量やティーチング情報等を充実させ, CADシステムの性能評価に必要な標準的データベースの構築に向け準備を進めた.
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