研究概要 |
本年度は,過年度までに開発してきた計算機支援診断(CAD)システム性能の更なる向上,とくに胸壁に付着した結節陰影など,非孤立性肺結節陰影の検出率向上を行った. はじめに,悪性腫瘍部分の画像解析を行って,新たに有用な特徴量を抽出することを試みた.とくに,これまで孤立性の肺結節陰影を対象としてきたが,胸壁などに付着する非孤立性陰影の中には,悪性のものが多いことから,このような非孤立性陰影の検出感度を改善する方法を開発した.新しい検出法は,非孤立性陰影を孤立性陰影に擬似的に変換することで,これまでに開発済の孤立性陰影用のアルゴリズムと統合した方法である.この場合,胸壁部分と腫瘍陰影部分を分離して擬似的な孤立性陰影に変換する方法の性能が全体の検出能に大きく影響する.分離法として,動的輪郭モデルを用いた方法,2重閾値を用いる方法,形態学的フィルタを用いる方法などを開発して,それらの性能を詳しく検証した. その結果,最も高性能を示したのは,肺野部分と胸壁部分の2つを,その他の部分と閾値で分離する2重閾値を用いる方法であった.従来法では非孤立性悪性陰影の検出感度が6割程度であったのに対し,新しく開発した2重閾値を用いる統合法では9割程度にまで改善することに成功した. また,診断対象となるX線CT画像のさらなる収集を行ってデータベース化し,所蔵データ量やティーチング情報等を充実させ,CADシステムの性能評価に必要な標準的データベースの構築に向けて準備を進めた.
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