研究概要 |
本年度は,まず,本研究テーマの超音波エコー符号付け法の原理の理論的一般化を検討した.当初考案した原理は,超音波エコーの基本波成分と第2高調波成分(周波数比1:2)に着目し,第2高調波成分の位相を,基本波成分を自乗して得られる同じ周波数の信号の位相と比較して,超音波エコーの符号を決定するものであった.これは,周波数比m:m+1の成分に着目し,それらを,それぞれm+1乗およびm乗して得られる同じ周波数の信号の位相を比較する方法へ拡張される.当初の原理はm=1の場合に相当する.mとして1より大きい適当な自然数を選べば,超音波プローブの限られた周波数帯域をより有効に使い得ると考えられる.また,両周波数のエコーを連続する2回の送受信により得てもよい.これにより,撮像速度が半分に低下するものの,両周波数成分を帯域通過フィルタなしに分離できるので,距離方向に高い分解能が実現できる.つぎに,本研究の方法による頚動脈壁の撮像を試みた.周波数が大きく異なる超音波を用いる本方法では,周波数に依存する回折効果の影響を強く受けることが予備検討により判明した.方位方向に高い分解能を実現しようとすると,Fナンバーの小さなフォーカス系を用いる必要があるために,この問題が露呈しやすく,高度な補正が必要となることが予想される.そこで,皮膚からの距離がほぼ一定で,方位方向には高分解能を必要としない頚動脈を選んで,撮像実験を行った.頚動脈内壁の音響インピーダンスが,血液より低いとすると辻褄の合う超音波画像を得ることができた.この知見については,その科学的信憑性および医学的有用性について,次年度以降さらに検討を加えていく必要がある.以上について,共同研究者である日立製作所中央研究所東研究員が,2007年10月末に開催されたIEEE International Ultrasonics Symposiumにて報告した.
|