研究概要 |
本年度は, 本研究テーマの超音波エコー符号付け法が, 現実の生体エコー信号について有効であることの確認を行った. 検討した方法では, 中心周波数比2:3の送信波形のそれぞれを用いて2回の送受信を行い, 前者の送信波形により得られた受信波形を3乗, 後者の送信波形により得られた受信波形を2乗して中心周波数の等しい受信波形を得た上で, 両者の間で位相敏感検波を行う. 2乗した受信エコー波形は常に正の符号をもつのに対し, 3乗した受信エコー波形は元々の受信エコーの符号を保存しているので, 両者の間の位相敏感検波結果は, 元々の受信エコーの符号を反映するはずである. この原理に基いて, ヒト頚動脈を対象に符号付エコーイメージングを行った. 送信波形の変更が可能な超音波診断装置より, ビーム形成後データを引き出し, コンピュータ上のオフライン処理により上記の処理を行った. 健常者の頚動脈壁が、血液を基準として一様なエコー符号を示すことが確かめられたのに対し, プラークの存在が疑われる被検者の頚動脈壁については, 一様ではなかった. このことは, 本研究の提案方法が, 音響インピーダンスを反映した符号をもつ超音波エコー法として信頼し得るものであることを示唆すると同時に, 頚動脈内壁の健康状態を早期診断する手法としての可能性を示している. ただし, この臨床医学的重要性については, 今後, 手法を改良しながらさらなる検討を加えていく必要がある. 以上について, 研究代表者が, 2008年11月に開催されたIEEE International Ultrasonics Symposiumにて報告した.
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