1.音響化学療法による抗腫瘍免疫応答惹起作用の検討:in vitroで超音波感受性剤の共存下に、ヒト胃癌細胞に超音波を照射し、免疫応答の惹起に重要なHSP70の発現レベルの増加を比較することを目的とした。当初超音波感受性剤としてDCPH-P-Na(I)を使用したが、水溶性に問題があるためか、超音波共存下での安定した細胞傷害活性が見られなかった。そこで新しい水溶性ポルフィリン誘導体DEG-Mn-DP-H(以下DEG)について超音波および光感受性と抗腫瘍効果を検討した。ヒト胃癌細胞株を標的として調べた結果、DEGは光照射によってはまったく細胞傷害性を示さないことがわかった。次にDEG存在下に超音波照射を行うと、用量依存的にATX-70よりも強力な細胞傷害性を示した。この細胞傷害活性は一重項酸素のスカベンジャーであるヒスチジン共存下やN-アセチルシステイン共存下では抑制されることから、超音波により励起されたDEGがヒドロキシラジカルを発生して細胞傷害性を発揮することが示唆された。これらの結果からDEGはATX-70やDCPH-Pよりも優れた超音波感受性剤であり、本研究に有用であることが示され、以後の実験に使用する予定である。 2.マウスの抗CEA rIgA組換えタンパク産生:マウスの抗CEA rIgA組換えタンパク産生のためマウス脾細胞よりIgA定常部遺伝子のクローニングを試みたが、これまで成功せず、前年度ヒトで行った抗CEA rIgA抗体と音響化学療法との併用効果の検討をマウスで行うことは今後の課題として残された。
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