研究概要 |
虚血性僧帽弁逆流に対し外科的弁輪形成術を施行した31例および正常者20名に対し、僧帽弁拡張期弁口面積を連続の式[(左室拡張末期容量-左室収縮末期容量)=僧帽弁流入血流量=僧帽弁口面積x血流の速度時間積分値)]により計測した。正常者では弁口面積と弁輪面積はほぼ同程度であった(4.7vs.5.2cm^2,n.s.)。これに対し外科的弁輪形成術を施行した症例では拡張期弁口が有意に低下していた(4.7vs.1.6cm^2,p<0.01)。また、形成術後症例では弁輪面積よりも弁口面積の方が有意に狭窄していた(1.6vs.3.3cm^2,p<0.01)。狭窄部位は弁輪部ではなく弁口部であった。この拡張期僧帽弁口面積の低下は弁尖の可動性の低下と有意に関連し(r=0.56,p<0.01)、左室拡大により減少する有意に相関も示した(r=0.41,p<0.01)。弁尖に器質的な病変はないのに有意な狭窄があるので機能性僧帽弁狭窄症という病名が適切と考えられた。この機能性僧帽弁狭窄の重症度は心不全の重症度の独立した危険因子であった。機能性僧帽弁狭窄症例12例に運動負荷心エコーを行ったところ、運動中には僧帽弁狭窄が有意に悪化し(弁口面積:2.0vs.1.4cm^2,p<0.01)、機能性僧帽弁狭窄は動的に変化することが示された。弁輪形成による弁輪サイズの減少と左室拡大に伴う弁尖tetheringにより機能性僧帽弁狭窄が出現し、運動により動的に悪化し、心不全に関与する病態であることが確認された。
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