研究概要 |
本年度は, 昨年度の健常若年者を対象とした研究成果を基に(Asaka T, et.al. Exp Brain Res, 2008), 対象を健常高齢者およびバランス障害のある中枢神経疾患に広げて解析した. (1)フィードフォワード姿勢筋活動パターンの加齢による影響 : 健常高齢者9名を対象に, 予測的姿勢制御の筋活動パターンについて健常若年者9名と比較検討した. 体幹, 股関節, 膝関節の屈筋と伸筋の筋活動の交互相関係数を解析し, 最大相関係数におけるtime lagについて比較検討した. time lagが短い程, 主動作筋と拮抗筋が同時収縮していることを示す. その結果, 体幹の屈筋と伸筋の筋活動のtime lagが, 高齢者群は若年者群に比べて有意に短かった. さらに, 体幹・下肢筋群の積分筋電値を主成文分析したけっか, 高齢者群は若年者群に比べて有意にco-contractioh Modesの数が多かった. これらの結果から, 加齢によってフィードフォワード制御の活動パターンが相反性から同時収縮パターンへと変化することが明らかとなった. この成果は, InternatoRal Scientific Conference Motor Control(Zakopane, Poland)で発表し, 論文に掲載されている(Asaka T and Wang Y, J Human Kinetics, 2008). (2)小脳性失調における筋シナジーについて : 自立歩行可能な軽度の小脳性失調症患者を対象に, フィードフォワード制御およびフィードバック制御の筋活動の協調性(筋シナジー)についでUncontolled manifold(UCM)解析を用いて定量的な解析を試みた. その結果, 患者群は健常者群と比較して, フィードフォワード制御では協調性が良好に保たれているがフィードバック制御では有意に低下していることが示された. この成果は, 本年6月にInternational Society for Posture & Gait Research(Bologna, Italy)で発表する予定である.
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