研究概要 |
WKYラットを手術し, 5/6腎摘慢性腎不全モデルを作成した。ラットを以下の8群に分け, 12週間にわたって治療した。1) 非治療(C)群, 2) 運動(EX)群, 3) G-CSF群, 4) EX+G-CSF群, 5) EX+olmesartan(OLS)群, 6) G-CSF+OLS群, 7) EX+G-CSF+oLS群, 8) 偽手術((S)群。EXは速度20m/分の走行運動を1日1回60分間, 1週間に5日間行った。G-CSF(5μg/kg)は連日皮下投与した。2週間毎に収縮期血圧(SBP), 24時間尿蛋白排泄量(UP)を測定した。治療開始週と最終週にトレッドミル運動負荷試験を行い, 総走行可能距離(TRD)を測定した。最終日に断頭採血し, 血清クレアチニン(Scr), 血液尿素窒素(BUN)を測定した。残存腎を摘出し, 糸球体硬化指数(IGS)を評価した。 Sに比較して, CのUP, Scr, BUN, IGSは有意に増悪した。一方, Cに比較して, G-CSFとEX+G-CSFのUP, EX+G-CSFのScr, G-CSFとEX+G-CSFのBUN, EXとG-CSFおよびEX+G-CSFのIGSは有意に改善した。また, G-CSFとEX+G-CSFのIGSはEXに比較して有意に改善した。特に, OLSの併用では最も良好なSBPとUPを示し, また, 全てのEX治療群の12週間後のTRDは非EX治療群に比較して有意に延長した。以上より, G-CSFとEXの単独治療による降圧効果と腎保護効果が示唆され, OLSの併用により降圧効果と尿蛋白減少効果が増強した。さらに, 3者の併用は, 腎保護効果と降圧効果を発揮しながら運動耐容能を増強させる可能性が示唆された。まだ解析は半ばであるが, 長期的運動療法, G-CSF療法およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬療法の併用効果を確認し, そのメカニズムを明らかにする有力な手がかりが得られた。
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