嚥下は、舌、口蓋、舌骨、咽頭、喉頭などの多数の器官の複合的な働きで成り立つ。嚥下に関わるこれらの器官の詳細な動きを解明することは、嚥下機能の解明に最も重要な要素の1つである。本研究では複数の磁気マーカを用いて立体的な測定が可能で、生体内でも使用が可能な磁気式のモーションキャプチャーシステムを用いて嚥下における舌骨、喉頭蓋の3次元的な動きについて多角的な分析を行なった。 まずウサギの安静時における基礎データの採取を行なった。あらかじめ外科的処置によって生体内の計測部位にモーションキャプチャーシステムのマーカを埋入した。更に計測部位以外にも頭蓋の3箇所にマーカを設置することにより、基準面を設定し、それに対する各計測部位の3次元的な動きを解析して生体内での位置検出が確実に行なえることを確認した。外科的処置後は一定期間経過観察しマーカを埋入した部位に異常がないことを確認した後、嚥下反射が消失しない深度の浅い麻酔を行なって専用の固定装置で固定して計測を行なった。計測は、磁場、電波、振動などから遮蔽された空間で行い、その際に嚥下させるものは水、軟食、硬食とした。 今後の検討課題としては頭位の変化に対して嚥下時の舌骨、喉頭蓋の動きがどう影響を受けるか、健常ウサギで頭部の屈曲時、伸展時、回旋時におけるデータを採取し、安静時の場合との差異の比較検討と一定期間飼育した高齢動物を用いてに嚥下時の舌骨、喉頭蓋の動きに関してのデータを採取することを予定している。高齢動物については実験終了後必要な試料を採取し、組織学的検討を行なって喉頭蓋弾性軟骨の石灰化などの喉頭部の病的変化の影響を若年のウサギと比較検討することを予定している。
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