本年度は、健常者を対象に、アイカメラとファンクショナルMRIを用いて日本語の文章を読むときの眼球運動と脳活動の計測を続行、解析を行い、結果を投稿した。 全対象者の脳の構造画像から皮質地図を作成し、独自に開発した視覚刺激を用いて、地図上の1次視覚皮質領域に、視野の水平子午線と各偏心度に相当する位置を同定した。その後、漢字単語の始まりと次の漢字単語の始まりの間隔が視角5度になる文章(5度文)と、その間隔が3度になる文章(3度文)とを、右から左へドリフトさせて提示し黙読させた。この間の眼球運動と脳活動を記録した。解析の結果、漢字単語の始まりから次の漢字単語の始まりへの衝動性眼球運動が、5度文では約5度、3度文では約3度の振幅で繰り返されていた。しかし、1次視覚皮質における賦活は、全員いずれの条件でも、左の1次視覚皮質の、注視点および注視点から水平約4.5度の位置にピークがみられた。以上より、我々が日本語文を読むときには、現に読んでいる注視点以外に、右の傍中心窩偏心度約4.5度の位置に相当する脳領域の活動を高めて、注意を集中している可能性が示唆された。この最終結果はBrain Research誌に投稿中である。 今後、同じ実験を1次視覚皮質の保たれた半盲性難読患者で行い、読みがうまくいかない脳機構を、注意のスポットの位置の誤りの観点から解明したい。また、難読が改善した半盲患者に同様の検査って代償機構を解明したい。その知見に基づいたリハビリテーションを開発したい。
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