研究概要 |
今年度は前年度の研究において下肢筋力トレーニング法としての有効性が示された機能的電気刺激(EMS)を用い,呼吸困難を有する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対してEMSを用いた呼吸リハビリテーションプログラムと従来のプログラムによる効果の差を検証した。呼吸リハビリテーション目的入院中の症状の安定したCOPD患者14名を対象とし,筋力・持久力トレーニングとして自転車エルゴメーターを実施する群(CON群)7名とEMSを実施する群(EMS群)7名にランダムに分けた。その他のリハビリテーションメニューは全例同様のプログラムを4週間実施し,両群のトレーニング効果を検証した。検討項目は大腿四頭筋・下腿筋筋厚,膝伸展筋力,6分間歩行距離(6MWD),日常生活動作能力(NRADL)、呼吸筋力、BODE INDEX、Medical Research Council dyspnea scale (MRC)とした。その果,筋厚はEMS群において大腿直筋・外側広筋・下腿筋が増加したが,CON群はほとんど変化しなかった。また筋力はEMS群で有意に増加し,CON群はわずかに増加した。6MWDとNRADLは両群とも増加したがEMS群の増加率が有意に高かった。 以上のことから,EMSトレーニングは呼吸困難を出現させることなく、特に筋に十分な過負荷を与えることで効果的な筋力・持久力増大をもたらすことが示唆された。これは呼吸困難出現の因子とされる中枢性疲労が存在しないことや、末梢循環に関する様々なメカニズムが考えられる。このようにEMSを用いたプログラムは従来のプラグラムに比べ,より効果的であることが示され,EMSはCOPD患者に対する呼吸リハビリテーションの新しいツールに成り得ると考えられた。
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