研究概要 |
本年度は、人工視覚の網膜刺激法の1つである脈絡膜上-経網膜刺激(STS)方式の時間特性の評価の初めとして、外側膝状体の中継細胞の単一ユニット記録を行い、STS刺激の頻回刺激による反応の追従性を調べた。刺激には強膜側に設置した直径100umのPt電極から硝子体電極の間に幅200usecで内向きの単相矩形波電流を用いた。その結果、例えばある細胞の例では、閾値程度の電流強度(150uA,30nC)の場合、5Hzの刺激では、誘発されるスパイク応答は刺激に必ず応答していたが、刺激頻度を上げるとスパイクが出現しないことが増え、20Hzまで頻度を上げると、刺激に応答しなくなった。しかし電流強度を閾程度の2倍(300uA,60nC)に上げたところ、20Hzの電気刺激でも毎回スパイク応答が出現した。これよりさらに刺激頻度を上げたところ、50Hzでは100Hzで2割程度の刺激に対してしかスパイク応答は出現しなかった。電気刺激によって有効な感覚入力を得るためには、刺激は1発ではなく複数発を与える必要があることがこれまでにわかっているが、刺激電流の最適化のためには、閾値以上の刺激を与える必要があることがわかった。また、これまでの外側膝状体からの単一ニューロン記録に加えて、ネコ大脳皮質野からの集合電位のマッピングによる、脈絡膜上-経網膜刺激の空間的な興奮の分布の記録を行った。潜時8-10msecに生じる陰性波の大きさを大脳皮質上の距離に対してプロットして、その曲線の半値幅である皮質上の距離を調べると、1mm以下に収まっていることがわかった。
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