研究概要 |
STS(suprachoroidal transretinal stimulation)方式の網膜電気刺激によって生じる視覚中枢における反応の時空間特性を明らかにするために、大脳皮質から多点電極を用いて誘発反応を記録した。ネコ眼球の強膜側に直径100μmの電極を装着し、硝子体内に刺入した電極との間に各相500μsの二相性電流を通電した。大脳皮質視覚野に、深さ方向200μm間隔で4極の電極が、4本水平方向400μm間隔で配列している多点電極を刺入した。刺激パラメータを変えながら、前後方向に移動させながら反応のマッピングを行った。これにより視覚野上で、強膜側刺激電極が刺激している網膜部位に相当する場所を確実に捕らえることができた。cathodic first, anodic firstと時間的に矩形波を入れ替えた波形を刺激パターンとして用い、150, 300, 500μAと電流強度を変化させて得られた誘発反応の大きさを定量的に解析した。50ms以内の陰性頂点の電位を計測し、cathodic firstとanodic firstの間で比較すると、anodic firstに対してcathodis firstの反応の大きさは150μAで88.0%, 300μAで84.9%, 500μAで91.3%と、いずれの刺激電流値でもanodic firstの方が大きいことがわかった。ただ、その差は10-20%程度であり、どちらかの波形パターンに絶対的な優位性があるわけでもないため、人工視覚の最適パラメータとしてはどちらも選択可能であり、刺激効率以外の、安全性などその他の要因を考慮することができると考えられた。
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