研究概要 |
本研究は,臨床研究で明らかになった,損傷ACLに過剰なストレスを加えず,早期からの保護的関節運動を通じて,適度な力学的ストレスを付加することが靭帯治癒を促進させることを,動物モデルをもとに画像診断学,免疫組織化学,生体工学的方法により証明することを目的とした. 1 後肢懸垂モデルの作製 ラットの懸垂用ジャケットを作製した.ジャケット全体を弾性素材を用いて通気性を工夫し,鼠径部分をクッション性のある素材で包み縫合し,接触面積を広げて皮膚への圧迫を少なくした.しかし,ラットの成長および吸気による胸郭の拡大を考慮してジャケットを緩めに装着すると,ジャケットより抜け出る例が約半数近く認められた. そこで新たに尻尾を直接牽引する方法を考案した.特殊なバンデージを広範に尻尾に巻きつけ,皮膚への圧迫を少なくし局所に牽引力が集中しないようにした.この尾部を懸垂する方法によりほぼ後肢懸垂が可能となった. 2 ACL断裂に対する保存治療の動物モデルの作製 膝関節が自由に屈伸できるような後肢懸垂を行った.1週経過後,2週経過後,2週の懸垂と1週の自由運動後の切断ACLについて検討した.1週懸垂群,2週懸垂群,2週懸垂および1週自由運動群ともに,膝関節への過剰ストレスの防止と下肢屈伸運動により,大腿骨と脛骨間に連続した組織が観察された.特に懸垂後に自由運動を負荷させると肉眼では太い組織に変化していた.しかし,この大腿骨と脛骨間に存在する連続組織はACLの走行とは異なり,靱帯組織とは異なる滑膜様組織であることが解った.また,自由運動を付加した群では関節軟骨に変形性関節症の変化が発生していた.
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