研究概要 |
本研究では、臨床研究で明らかになった損傷した前十字靱帯(以下ACL)に損傷早期より過剰なストレスを加えず、損傷直後からの保護的関節運動を通じて、適度な力学的ストレスを付加することが靭帯治癒を促進させるという動物実験モデルを作製した。 (1)後肢懸垂モデル:ラットを用いたACL保存療法モデルとして、後肢懸垂モデルを作製した.ACLを完全に切断した後,独自に開発したジャケットを装着させ,膝関節が自由に屈伸できるような後肢懸垂を行った.懸垂後に自由運動を負荷させると治癒ACLが消失し、変形性膝関節症が発生した.ACL損傷後早期の自由関節運動は損傷靭帯の修復を阻害する可能性が認められた。 (2)関節包外連結による関節制動モデル:ラットを対象とし、人工靭帯を関節包外の軟部組織に輪状に配置し、脛骨の前方引き出しを抑制するモデルを作製。8週間後にはACLは退縮することなく、膝関節内に瘢痕化組織が存在し、ほとんど変形性関節症の症状は認められなかった。特に懸垂後に自由運動を負荷させると太い靱帯に変わることが解った。自由運動を継続することで靱帯強度が増加する可能性があり、この実験モデルで、ACL治癒機構の解明が可能と考えている。また、ヒトACLとラットACLの治癒期間に差があると考えられ、臨床応用には注意を要する必要性が示唆された。 (3)MRIによるヒト新鮮損傷ACL保存療法における経時的治癒過程:ACL新鮮損傷患者に対し,この対象者の損傷直後からACLが治癒するまでの修復過程のMRI像を4週間おきに撮影した.ほとんどの症例でACLは大腿骨付着部で断裂し、大腿骨・脛骨付着部より低吸収像が出現した症例、脛骨側から低吸収像が出現した症例が認められた。
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