研究課題
温熱療法中の体温上昇により増加した心拍出量によって流量の増えた末梢血流がズリ応力を繰り返し末梢血管内皮に与えることで内皮における一酸化窒素合成酵素の発現が増加する。その結果内皮からの一酸化窒素産生か増加して血管内皮機能・血管拡張能が良好に保たれ、結果心不全症状が改善することが明らかにされてきた。慢性重症心不全患者(全身浴による温熱療法が不可能な患者)を対象に、室内で行える部分浴である下肢足熱による温熱療法により、QOL・酸化ストレス・血管内皮機能・心機能が改善するか否かを検討した。補助人工心臓あるいはカテコラミン持続静注ポンプを装着した心臓移植待機中の慢性重症心不全患者に対し、タオルでくるんだ下半身に42度のスチーム浴を15分間施し、後30分間はそのまま安静保温を保つというプロトコールを2週間継続して前後での血管内皮機能や心機能などを比較した。参加症例は補助循環管理下において血行動態の安定している男性4例女性1例平均年齢36歳。足熱療法施行前後で血圧・心拍数の変動なく、施行中に不整脈の増加など認められなかった。左房径・左室拡張末期径は変化なかったものの心胸郭比は減少傾向を示した。また心筋短縮率と僧帽弁逆流程度にも改善傾向を認めた。上肢の内皮依存性血管拡張能は有意に増加し、酸化ストレス指標であるヒドロペルオキシドは有意に減少した。血管拡張関連物質である一酸化窒素酸化物の血中濃度も増加傾向を示した。心不全の生化学バイオマーカーであるNT-proBNPは前後で低下傾向を示しか。QOLはやや改善傾向だった。以上より足熱療法は、明らかな副作用なしに心不全の心形態的・心機能的・生化学指標を改善し血管拡張機能を改善する傾向があった。かかる効果は従来より報告されている温熱療法の血管内皮障害的な酸化ストレスを抑制し、血管拡張物質を発現する作用と同様の機序に基づくと推測された。
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