研究概要 |
本研究では,唾液バイオマーカーの計測で得られた生徒の生理状態に関する情報を,不登校生の直接支援にフィードバックし,スクールカウンセラーや担任教師の効果的な介入を支援するメンタルヘルスマネージメント手法を確立することをその最終的な目的としている。本年度は,中学生を対象としたストレス検査と,内分泌マーカーの迅速分析技術の開発を行った。 ストレス検査では,中学1年生(12-13歳)70名(男子36名,女子34名)を対象にし,唾液バイオマーカーを3週間にわたって経時的に検査した。同時に,精神健康調査票(GHQ),状態-特性不安検査(STAI)の主観評価を実施し,唾液バイオマーカーとの関連性を評価した。その結果,GHQの社会的活動障害尺度の高値群(4以上)で,低値群(2以下)と比べ唾液アミラーゼ(sAMY)が有意に高かった(p<0.05)。また,STAIの状態不安尺度の高値群(50以上)でも,低値群(35以下)と比べsAMYが有意に高かった(p<0.05)。これらより,生徒の心理的状態が唾液バイオマーカーに反映されることが示唆され,メンタルヘルスマネージメント手法確立に向けた本年度の目標を達成した。 内分泌マーカーの迅速分析技術の開発では,免疫測定法と酵素センサを融合することで,唾液コルチゾール(CORT)を迅速に分析可能なCORTセンサの基本原理を考案し,免疫測定法に必須となるGOD-CORTコンジュゲートを作成してその基本特許を出願した。また,本研究の成果は,国内外の学術論文3編,国際会議2件等で報告した。
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