研究概要 |
本研究は,重度神経疾患者(児)・高位頸髄損傷者の脳波応用(sEEG)による意思伝達支援システムの開発を目的としている.聴覚刺激の選択的注意で誘発される事象関連電位P300(P300 ERPs)をデバイス制御コマンドとして活用する意思伝達支援システム(Brain-Computer Interface: BCI)の構築に主眼を置いている.特に,従来からのP300RRPs誘発に用いられている二種類の純音を気導聴覚刺激としてランダム呈示する方法ではなく,片側乳様突起部からの骨伝導聴覚刺激によって誘発する点を特長とする.初年H19年度は,1.BCI開発用多チャンネル脳波計測システムの整備と記録・解析システムの構築,2.骨伝導聴覚刺激システムの構築.誘発最適条件の検討と刺激音の調音,3.刺激提示に同期した波形パラメータ抽出システムの構築と刺激条件の検討,4.刺激条件提示による事象関連電位のオフライン・データ分析,5.抽出波形の誘発精度の検証と効率化条件の明確化,の5つの項目について研究を進めた. 気導と骨導聴覚刺激における刺激音の周波数を変化させ,導出した信号振幅について検討した.短音・純音の片側からの気導・骨導聴覚刺激呈示で,ともに目的P300ERPsの導出が可能であった.気導聴覚刺激では,1kHz〜2.5kHzでより明確な振幅が得られる傾向が確認された.骨導聴覚刺激では,500Hzと2.5kHzで振幅が大きく,1kHz〜2kHzでは振幅が小さい傾向にあった.こうした検討から,呈示聴覚刺激が気導と骨導で,周波数によってそれぞれに異なる特性があることが示唆された.次年度は,さらに協力の得られる被験者を加え,骨伝導刺激によるP300ERPs誘発の再現性のあるた導出条件を検証しながら,骨伝導聴覚刺激によるP300ERPsを活用したBCI開発のための基礎的研究を進める。
|