研究概要 |
本研究は,重度神経疾患者(児)・高位頸髄損傷者の脳波応用(sEEG)による意思伝達支援システムの開発を目的としている.聴覚刺激の選択的注意で誘発される事象関連電位P300成分をデバイス制御コマンドとして活用する意思伝達支援システム(BCI)の構築に主眼を置いている.特に,従来からのP300誘発に用いられている二種類の純音を気導聴覚刺激としてランダム呈示する方法ではなく,片側乳様突起部からの骨伝導聴覚刺激によって誘発する点を特長とする.H19年度までに整備してきたBCI開発用多チャンネル脳波計測システムを用い,H20年度は,安定した目的P300誘発の最適条件と刺激音の呈示条件の明確化に主眼を置き,健常者を対象として実験実施して検討を進めた.骨伝導刺激条件によるP300導出では,標的刺激2000Hz・20%頻度においてFz-303ms, Cz-309ms, Pz-307msの平均した最大振幅が確認できた.また,ベースライン法による目的P300の振幅値は,Fz-10.6μV, Cz-8.8μV,Pz-9.0μVの平均振幅値が得られた.同様に,気導刺激でもFz-292ms, Cz-296ms, Pz-301msが得られており,骨伝導による誘発条件においても十分な目的P300が得られることが確認できた.音刺激の種類としては,立ち上がりと下がりを設けたトーンバーストが最も弁別しやすい傾向にあった.骨伝導音刺激のパラメータを変化させた基礎的実験では,音圧レベルで50から60dB(SPL),周波数では700Hz, 1.5kHz, 2.0kHz,持続時間は50から100msの条件で最も安定した最大振幅値が得られる傾向にあった.最終年度(H21)は,さらに協力の得られる被験者を加え,骨伝導刺激による事象関連電位P300の再現性のある導出条件を検証し,骨伝導聴覚刺激によるBCI開発のための基礎的研究を進める.
|