1. 長時間着座時の腰痛を予防する機器として持続他動運動(Continuous passive motion: CPM)装置を開発してきた。従来型の椅子のLumbar supportにのみ収縮性エアバッグを設置したCPM(単一型)では腰痛予防効果が限定的である。一方、Lumbar supportと座面の両面にCPM装置を設置し両者の動きを連動させた連動型CPMは極めて有効であることを示してきた。本研究では連動型の有効性の根拠となるCPMによる身体の動きを検証した。対象は健常男子学生23人とした。 (1)CPMによる全身の動きをX線で計測した。腰椎アライメント(T12-S1前弯角)は立位で平均52±22°であるのに対し、着座により13±21°と前弯が減少した。CPMによる変化量は単一型で10±5°、連動型は13±7°であり、仙骨の傾斜角の変化量はCPMによる変化は単一型で2±14°、連動型は5±9°と両群間に有意差なく僅かに連動型で拡大した。連動型の効果は腰椎や骨盤の動態角差の大きさに依存するものではないことが明らかとなった。 (2)上記の予備実験として立位のバランスをX線で評価する際の上肢の肢位の条件に関して検討した。最も上肢自然下垂に近いとされる拳を鎖骨に置く姿勢(fists-on-clavicles)でも、C7 plumb lineは大きく後方へと変位することを示した。脊椎アライメントおよびバランスを評価する際に上肢の肢位の条件設定が重要であることを示した。 (3)座面の接触面積の変化量は単一型では23.3±15.7cm^2であったのに対し、連動型は62.1±58.4cm^2と有意に拡大していた。 2. 腰痛患者を対象とした腰痛予防効果を現在検証中であり、今年度中にデータ解析する。 3. 深部静脈血栓症の予防効果を検証するために長時間着座前後に採血し、D-dimersや血液粘度などを測定予定である。
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