研究概要 |
1.長時間着座時の腰痛を緩和するための持続受動運動(CPM)装置を開発してきた。従来法は背もたれにCPMを装置するもの(腰CPM)であるが、我々は座面にもCPMを設置し一方の縮小時に他方が拡大する連動逆位相型と同時収縮する連動同位相型を開発し、健常人における有効性を確認してきた。今回、連動型CPMの有効性の根拠を明らかとするために、X線計測により姿勢の変化をBig Matにより座面の圧分布の変化を検証した。対象は健常学生13人とした。腰CPMと比較し連動逆位相型では腰椎・骨盤傾斜角度の変化量が有意に大きく、一方で連動同位相型は重心の変位量が有意に大きかった。 2.腰痛患者における本装置の有効性を検証した。対象は腰痛患者39人(平均63.9歳,RDQ平均12.0点)とした。連続1時間着座後の腰痛のvisual analogue score(cm)ではCPMなし(平均5.1)、腰CPM(平均3.4)、連動同位相CPM(平均3.7)、連動逆位相CPM(3.4)であった。逆位相CPMが最も有効であったが、他の稼働条件との有意差はなく、腰痛患者に対する有効性は低いと結論づけた。 3.座位脊柱姿勢をX線計測するための基準となる立位脊椎撮像法では至適な上肢肢位の撮像条件が明らかでない。最適な上肢肢位を決定するために健常男子21人を対象として上肢位5条件で立位全脊柱側面像を撮像した。腹部の前で手を組む肢位が最も上肢自然下垂に近く、姿勢の評価に適することが明らかとなった。 4.健常学生4人を対象として連動型CPMによる深部静脈血栓症の予防効果を検証した。連続4時間の着座実験後のD-dimerや血液粘度を各種CPMの稼働条件で比較した。稼働条件間の有意差はなく、連動型CPMによる深部静脈血栓症の予防には限界があり、更なる工夫を要すると思われた。
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