研究概要 |
健常者9名に対し,大脳皮質運動野に経皮的パルス磁気刺激を与え,尺側手根伸筋(ECU)から双極ワイヤー電極を用いて運動誘発電位波とH波を導出した.これらの被験者は,最大等尺性手関節背屈運動時のECUの筋電図を双極ワイヤー電極で導出した者とした.測定時の前腕肢位は,回内・外の2肢位に設定した. ECUの磁気刺激運動誘発電位波形の振幅においては,前腕回外位に比べ回内位で有意に大きかった.H波においては,被験者9名中6名で導出可能であり,その振幅には有意な差は認めなかった. このことは,前腕肢位が異なることによるECUの活動様式の違いは,前腕肢位の違いがニューラルネットワークの活動に影響を与え,最終的に皮質脊髄路細胞の興奮性が変化したことによって生じているものと考えられた.しかし,我々は,これまでに,最大等尺性手関節背屈運動時のECUの筋電図は前腕回内位よりも回外位で大きなることを示してきたが,今回計測したECUの磁気刺激運動誘発電位波形の振幅においては,これと反対の結果となった.このことは,ECUは,前腕回内位では手関節背屈機能よりも手関節尺屈機能という強力な機能があり,この影響が強く表れたものと考えられた.
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