研究概要 |
これまでこの運動学習の研究は,いかにしたら運動学習が効率的に進むかに焦点が当てられ,主に練習方法と学習過程における運動結果の与え方が着目されてきた.つまり,実際に身体を動かしその誤差を修正するといった,トライアンドエラーを基本としている.これに対して,実際に運動しなくても運動を観察したりイメージしたりするだけで運動学習の効果が現れることが明らかにされ,観察運動学習と呼ばれている.しかしながら観察運動学習の研究においては運動時間やタイミングなどが着目されているに過ぎず,力調整や関節スティフネスの調整などの実際の運動学習の主体が環境へ働きかける側面からの研究はない. そこで本研究は,観察運動学習のメカニズムの解明を目指し,この観察学習によって身体運動の制御で最も重要と考えられる関節スティフネスが変化し身体運動を変化させることができるか否かを検討した.その一年目として,ドロップジャンプを関節スティフネス調整の運動対象に選び,10名の健康な被験者に異なる着地方法(つま先着地と踵着地)でドロップジャンプを行ってもらい,その映像とフォースプレートから得られる力データから下肢各関節および下肢全体の関節スティフネスを定量化した.その結果,着地方法の変化により関節スティフネスが変化することが明らかになった.この基礎データを用いて次年度は,関節スティフネス値が観察学習とともにどのように変化するかを明らかにする.さらに,その観察運動学習の際に被験者に見せるお手本の映像も変化させることにより,どのような映像が観察運動学習にとって有効かを検討する予定である.
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