研究概要 |
平成19年度は、パフォーマンス文化の理論枠組みの検討と、北米西海岸沿いワシントン州、オレゴン州の7つのネイティブ保留地区において、ネイティブ自身が運営するミュージアム、教育文化センター、図書館、文化施設において現地調査を行うとともに、身体思想の特性と球技神話の類型化について分析検討した。 その結果、北米ネイティブにみられる球技神話は、北米東海岸沿いに限られていることが確かめられた。具体的には次の3つである。1.モスコーギ(Muskogee/Creek Story)版-北米南東部(現任のジョージア)の部族。2.チェローキー(Cherokee Story)版-北米南東部ノースカロライナ/オクラホマ、アラバマでの収録。3.オジブウエイ(Ojibuwa,Ojibway)版-アルゴンキン語族系<北のカナダのLabrador地方から、南の米国Carolina、そして西の太平原地方>である。しかし、同じ物語でありながらも、その展開や結末には一定の違いが見られるように、それぞれの民族の生態系や価埴観などの観念形態(イデオロギー)の差異が示唆された。 他方、北米西海岸沿い北部では、生の営みに関わる社会的秩序・意味づけがトーテンポールによって構築されること、また、北米西海岸沿いの南部では、温暖な気候と豊かな漁獲に恵まれた川や海と結びついた「環境世界内存在」の物語を生み出していることから、世界と対時・融合しながら生活する生態系・環境の守り手としての身体、即ち、「身体とは環境世界内存在の媒質である」という本質特性が抽出された。
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