平成20年度は、前年度の継続研究として、アメリカ東部ノースカロライナ州とテネシー州にまたがるアパラチア山脈(グレートスモーキーマウンテン)縦谷のチェロキー・インディアン保留地において、当該民族の野外パフォーマンス(歌、踊り、語り)をはじめ、球技神話に語られるスポーツ(スティックボール)にみられる象徴性の実際を調査するとともに、観光産業(カジノ)、ネイティブ自身が運営するミュージアム、図書館などでインタビューを行った。今年度は、チェロキー族の身体パフォーマンスに語り継がれる物語を、文化的(自己)表現・アイデンティティの強化として理解し、過酷な歴史を経験したチェロキー族の上演行為の中に、民族のイデオロギー生成の契機、個人・集合意識の変容、自立への方途を見いだした。 一般に、パフォーマンス概念は多様であるが、それは身体があらゆるものと関わっているであり、身体的活動がもつ本質特性を整理する意味がいっそう明らかになった。そこで、遊びから儀礼までの連続体における多様なパフォーマンス行為が「パフォーマンスとしてのミュージアム(美術館・博物館・劇場)」の構築を果たし、その運営をネイティブ自身が担うようになった時、部族の自立の過程を見ると結論づけた。チェロキー族のパフォーマンス行為は、アメリカ史の物語なしには語れないことが改めて明らかにされ、世界と対峙・融合しながら生活する生態系・環境の守り手としての身体性を越えて、より明確な共同体意識に貫かれたスポーツ行為、パフォーマンス文化の本質特性が抽出された。
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