研究概要 |
本年度は,主として打撃実験環境の整備,およびヘッドスピード獲得メカニズム解明のための動力学的分析手法の定式化を行った.本年度に得られた主な結果を下記に示す. (1).硬式ボールの打撃を行っても,センサー部とグリップ部の干渉が生じず,大きな衝撃力に耐えることが可能な耐衝撃性センサーバットを製作した. (2).5個の光電センサを野球ピッチングマシーンの配球用スライダ部に配置し,これらのセンサーをボールが通過する際に,点灯させた高輝度LEDを消灯させる回路を作製することによって,マシンの投球タイミングを提示するシステムを構築した. (3).スウィング座標系によって表記した両手によるバットへの作用力および作用モーメントを入力として導出したバットの三次元的な運動方程式を変形することによって,バットヘッドスピードならびにヘッド速度の鉛直方向成分の獲得に対する,作用力および作用モーメントの貢献度を算出可能とした.これにより,ヘッドスピード獲得には,バット長軸方向作用力の貢献が最大であること,スウィング平面法線軸まわりの合モーメントの貢献は比較的小さいこと等がわかった. (4).さらに,バット重心の軌道から求めた瞬時回転中心を用いて,この回転中心まわりの回転運動として,バット重心の運動をモデル化し,上記項目(3)の手法を適用したところ,バットヘッドスピード獲得に最大の貢献度を示すのは,この回転中心まわりの運動によって生じる遠心力であることがわかった.
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