これまでの研究によって、低酸素環境に滞在するだけで(筋肥大に関与する)成長ホルモン分泌が促進する可能性が示唆されている。したがって、本研究では、酸素濃度を変化させた場合における成長ホルモンの分泌促進について検討を行い、低酸素短期滞在が成長ホルモン分泌に及ぼす効果を究明することを目的とする。 実験の対象は、一般成人8名(26-37歳)とした。 以下の条件で安静状態を保持してもらい、SpO2を連続測定しながら、採血を入室前、入室1時間後、2時間後、、滞在終了1時間後の計4回行った。 常酸素(20.93%)(0.5時間)+低酸素の17.4%(標高1500m相当)(2時間) 常酸素(20.93%)(0.5時間)+低酸素の15.3%(標高2500m相当)(2時間)(睡眠不可とした) なお。2条件の間隔は1週間以上空けて実験を行った。 8名のSpo2の平均値は、安静時(標高0m)では約97%、標高1500m相当では、94.9%、標高2500m相当では、90.1%を示し、標高が高くなるにつれて低下傾向を示した。今回、着目した成長ホルモンの分泌応答については、常酸素安静時を1とした時の、8名の平均値を常酸素安静時、低酸素室1時間後、2時間後、、滞在終了上1時間後の順で標高1500m時の値をみると、1、3.2、28.9、22.5を示し、標高2500m時では、1、4.2、39.3、30.5を示し、平均値でみると低酸素短期滞在が成長ホルモン分泌に与える影響がみられている。しかし、標高2500m時のみ統計的に有意な傾向を示しており、標高1500mでは個人差が大きく有意な変化の結果を得ることはできなかった。ただし、標高2500m時であっても、入室後のどのタイミングで成長ホルモンが高値を示すのかは個人によって差異がみられ、個人差のあることが明らかとなった。また、低酸素滞在時のSpo2と成長ホルモン分泌についての関係についても検討を行ったが、密接な関係は認められなかった。 以上の結果から、低酸素短期滞在は、標高2500mの高度であれば成長ホルモン分泌に及ぼす効果のあることが示唆された。しかし、個人差も大きく機序の解明が今後の課題である。
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