アメリカ合衆国において、スポーツへの参加を巡る問題は、とくに女性の機会や障害を持つ人の機会に関する事例などが見いだされた。直接的なスポーツについての国家法は現在のオリンピック・アマチュア・スポーツ法などに限定されるが、女性に関する機会拡大に大きく影響したとされる1972年教育法タイトルナインは、多くの訴訟において法的根拠として機能しており、重要な法規である。ただし、成立から30年以上が経過した今日でも、依然として十分な機会均等が保障されていないという指摘も多い。また、障害者への差別を禁止してきた一連の法規の結実点であるADA(1990年アメリカ障害者差別禁止法)の影響は、広く一般の施設ばかりでなく、スポーツの場面にも及んでいる。近年は、プロスポーツにおいて、その扱いを問題にする特異なケースも生じ、スポーツ界の競技規則ルールと一般法としての機会均等法との衝突として、興味深い。 ヨーロッパの法規や事例については、今後の継続的な検討を要するが、これまで、ヨーロッパ評議会を中心にスポーツ・フォア・オール憲章や障害者スポーツについてのいくつかの憲章や勧告類が採択されている。また、国によっては違いがあるが障害を持つ者、エリート競技者及びプロ競技者、他国籍者、高齢者、女性などのスポーツ機会を保障するための規定が出されており、意識の高さを伺わせるところである。これらとは別に、ドーピングやスポーツにおける暴力行為に関する勧告なども注目される。
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