体育スポーツ場面においては、合目的的な行動遂行のために瞬時の情報処理・状況判断能力が求められ、この能力の優劣が勝敗に大きく影響する。本研究では受動的とも言えるこの瞬時の情報処理・状況判断能力に焦点をあて、眼球運動と背景脳波やP300、CNVを主とした事象関連電位から調べた。まず、眼球運動からオープンスキル系の情報処理様式について、知覚一認知側面である状況判断能力の、構成要因(選択的注意、認知、予測、決定)を全て含む課題において、球技種目における熟練者と未経験者の眼球運動の比較を行い、視覚探索の違いを検討した。その結果、熟練者はターゲットの位置の遠近によって視点の分布を変える傾向がみられた。また、熟練者は中心から遠いターゲットまで視点配置を行うことができ、したがって課題中における一定時間内に動かすことのできる眼球運動の範囲が熟練者と未経験者では異なることという、瞬間情報処理様式を見出した。 次に、情報処理メカニズムについて事象関連電位を基に、競争といった高度な注意力が求められる場面で検討した。成分得点の分散分析より、第1成分は勝った時に増大し、第2成分は勝率の低い者及び負けた時において増大することが示された。以上の結果から、後期CNVの増大は、よりよい準備状態を反映したもので良好なパフォーマンスにつながり、前期CNVの増大は、過覚醒状態を反映しパフォーマンスの低下につながるものであることを見出した。
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