これまで明らかになった阿南市伊島に伝わる伝統的な水練の手順や泳法の概要について、さらに詳細な資料を得た。特にそれを知り記憶している証人として、神野林則氏(伊島出身、現在阿南市椿泊町在住)から提供された実筆によるイラスト等から、阿波水軍の実質的な担い手として関係が深かったであろう伊島海士の泳法会得の初歩的な過程を明らかにすることができた。 しかし、阿波蜂須賀藩のおよび阿波水軍の標準的な泳法や水軍部隊としての組織的な訓練法等に関する資料には未だ巡り会えず、それらの存在を確認するには至らなかった。 一方、これら藩士や水軍が水に入る目的を強調し、物を運んだり、据え付けたり、あるいは撤去したりといった水中での作業能力や、水中で敵と戦うための能力を獲得することを想定した水泳学習の可能性については、現在の学校教育で行われている競泳的能力の獲得とは異なる意図で展開することになる。しかし、自己保全、リスク回避、サバイバル、救助待機、積極的救助等命を守るための教育内容を統合し、安全を重視したより実践的な内容に展開できることが示唆された。
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