研究概要 |
本研究では肘屈曲運動による両側性と一側性の力-速度関係から見たパワー発揮特性が及ぼす影響を筋電図活動の測定を加えて検討しようとした。 被験者は健康な一般男子大学生14名(20.5±12歳)である。一側性、両側性の肘屈曲運動の力-速度-パワー関係のテストは、Wilkieと同機構の改変型エルゴメーターにより等尺性最大筋力(Fmax)の0・10・20・30・45・60%Fmaxを負荷として最大収縮を行わせ、肘関節角90°での速度を計測し、Hillの特性方程式により力-速度-パワー関係を求めた。筋電図の測定は左右の上腕二頭筋より表面筋電図を導入し、筋電図積分値(iEMG)を求めた。 Fmaxは、一側性>両側性、Vmaxは一側性>両側性、Pmaxでは一側性>両側性となり、一側性が両側性に比べ有意に高く、すべての項目で両側性機能低下がみられた。Fmaxにおいて両側性機能低下が見られたことは、谷口(1993)の報告を支持するとともに、本研究では筋力だけでなく速度やパワーにも両側性機能低下が認められることが示唆された。この要因として、右半球が左手の筋に左半球が右手の筋に関与し、両側動作で力を発揮する場合に右と左の脳が互いに抑制をかけあい活動を低下させる半球間抑制機構によるものであると考えられる(Oda et aL:1994)。力-速度関係、力-パワー関係ともに全ての負荷条件下で一側性が両側性を上回る傾向を示し、Vmax、V20、Fmax、Pmaxにおいて一側性が両側性より有意に高かった。この結果は、fast運動単位の活動抑制によって低負荷において有意な差の両側性機能低下がみられたと考えられる(Vandevoot, et. al.:1984)。以上の結果から、筋力のみならず速度・パワーにおいて両側性機能低下が認められ、速度では特に軽い負荷において顕著な両側性機能低下がみられた。
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